読書感想文


大阪モダン 通天閣と新世界
橋爪紳也著
NTT出版
1996年7月23日第1刷
定価1262円

 明治維新の後、東京に政治、経済の全てが集まっていく中、大阪市南部に一大遊興地を作る計画がたてられた。第5回内国博覧会の開催で立地条件を整えた後、民間中心の力でその遊興地は現実のものとなった。凱旋門とエッフェル塔を模しパリの町並みを意識した作りの北側と、遊園地を作り米国産の神様ビリケンを安置しアメリカの華やかさを意識した作りの南側からなるその遊興地につけられた名称は「新世界」。威容を誇る鉄塔は「通天閣」。いながらにして異郷に遊べる遊園地は「ルナパーク」。最も新しい町であった新世界は、設計者たちの目論見を外れ、数年でさびれる。異郷を模した街角は和風の興行小屋に建て直され、待ち合いやカフェーが立ち並ぶどこか猥雑な雰囲気のものに変化していく。そし、戦争。通天閣は火災で焼け落ち、大空襲で街角も破壊され、設計者たちの夢は灰燼に……。
 大阪「新世界」の変遷をたどりながら、明治・大正から昭和初期にわたる「都市計画」の状況を概括する。最新と思われた計画は、人々が集まることにより違った形で変貌し、やがてノスタルジーの対象となっていく。しかし、それが都市というもののごく普通のあり方なのだ。著者のそのような主張を「新世界」の歴史は実証してみせる。
 人々が新しい町に寄せた期待、現在から見ると奇抜としか思えない趣向。資料をもとに再現される建造当時の通天閣界隈は、明治末から大正にいたる時代の風俗の象徴である。時代の空気、そして都市計画の難しさと面白さを示す好著である。

(2003年6月3日読了)


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