読書感想文


大阪市の歴史
大阪市史編纂所・編
創元社
1999年4月20日第1刷
定価2000円

 先史時代から近現代に及ぶ大阪市域の歴史を概括した、いわば大阪市の歴史の〈教科書〉である。
 だから、一気に通読するにはいささかきついものがある。「物語」がなく、史実を分類して記述しているだけだからである。もちろん、〈教科書〉には「物語」は不要である。だから、無い物ねだりをしても仕方がない。とはいえ、「大阪市の歴史」をうたっているのだから、前近代の「大阪市」が成立してからの歴史に重点を置くべきだろうというのは勝手な言い種か。ごく普通の日本史の教科書にもかかれているような内容はなるべく省いて、例えば現在の大阪市につながるような(地名の由来など)に多くの頁を割くなどという工夫があってもよかったのでは、と思う。
 なにぶん、10冊に及ぶ大部の「大阪市史」のダイジェスト版なのだから、詳細な記述を求めるには「大阪市史」をひもとくしかないのだろう。ならば、ダイジェスト版でなければできない大胆な試みもできたのではないかと思う。労作だけに、同じ手間をかけるならばその分独自の面白さを出していくのが大阪的な合理性ではないかと、そう感じた。

(2003年6月8日読了)


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