読書感想文


大阪の20世紀
産経新聞大阪本社社会部著
東方出版
2000年7月10日第1刷
定価1800円

 1901年からの100年間で大阪を彩ってきた事件や人物にまつわるエピソードを72ピックアップし、様々な資料や証言をもとにまとめあげたもの。第5回内国博覧会、通天閣建設、大阪城再建、万国博……。新聞連載ならではのコンパクトさが、本書の場合はうまく機能している。
 特筆すべきは、図版の多さだろう。特に天六ガス爆発や千日デパート火災などの大事故では新聞社ならではの生々しい写真が当時の雰囲気を伝えてくれる。教科書の無味乾燥な記述ではわからない大阪の生きた歴史が浮かび上がってくる。
 本書でとりあげられた事件や人物に興味が出たら、それに関するくわしい本を読みたくなってくる。つまり、好奇心をひっぱりだすきっかけとしてうってつけなのだ。むろん、本書には収まり切らなかった事件も数多くあるが、あまり人に知られていないエピソードも多く収録されているから、そこらあたりの取捨選択の基準は難しいところかもしれない。本書の場合は、いかにも新聞社らしくジャーナリスティックな切り取り方をしている。また違った視点で編まれた類書が書かれてもいいとも思う。むろん、本書の価値がそれで下がるわけではないのだ。こういった試みはもっともっと多くなされるべきだと感じた次第。

(2003年6月9日読了)


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