ブレーブス・ブルーウェーブ−タイガースで活躍した左腕エースによる投球術の解説書である。速球が130km台と、プロ野球選手としてはかなり遅い著者だが、スローカーブは80km台の遅さを誇り、その落差で相手打者を幻惑してきた、その秘訣が明かされる。
著者は、小学生でもプロの選手をアウトにできる可能性がある、それが野球の面白さだと説く。速球、フォーク、カーブの3つの球をいかに有効に使うか、打者の心理に合わせてどう組み立てを変えていくか。その駆け引きの楽しさ、そして難しさが本書ではたっぷりと語られる。江夏豊ら本格派投手の投球術とはまた違った味わいがある。
面白いのは、ヒットは打たれても仕方ないものとしてその気持ちの切り替え方を説く部分で、「野球は結果オーライのスポーツだ」と断言するところである。どんなに過程がよくても結果がヒットや失点や敗戦であればそれは失敗なのであり、すばらしい当たりでもファインプレーでアウトになってくれればそれは成功なのだ。ここらあたりの気の持ちように、著者がプロとして生き延びた原因があると見る。
著者のいう「その場しのぎ」も、積み重なれば実績として残る。その実績をどう生かすか。著者の書きたかったテーマは、そこにあるのではないだろうか。
(2003年6月13日読了)