演芸評論家、放送作家であり大阪芸術大学教授でもある著者による、「漫才」と「諸芸」に関する教科書である。実際、あとがきで著者は大阪芸大通信部の教科書での教材に供したいと書いている。
漫才の笑いの仕組み、漫才の歴史、漫才一門の系譜などが掲載され、落語を除く「演芸」全般の基礎資料的な内容となっている。したがって、演芸について文章を書く時など手元に置いておくと固有名詞の特定などに役に立つ。読み物としての面白さは一切追求していないので、そういったものを求める場合は著者の他の著書を読んだ方がいいだろう。
ただ、年代別の漫才師の名簿みたいなものについては、せめて演者の生没年やコンビを組んでいた期間などもいっしょに書いてあった方が、さらに研究には役に立つだろう。著者には本書をさらに発展させた本格的な「漫才百科」の完成を望みたい。
(2003年6月25日読了)