読書感想文


笑う怪獣 ミステリ劇場
西澤保彦著
新潮社
2003年6月20日第1刷
定価1300円

 会社員のアタル、公務員の正太郎、青年実業家の京介の3人は、もてないくせにナンパばっかりしにいって失敗ばかりしている連中だ。しかも、その失敗の原因ときたら、彼らが何かしようとすると怪獣やら宇宙人やら改造人間やらとんでもないものがなぜか登場するからで、しかもそんな怪事件とは関係ないところで起こる普通の事件の謎とき……密室監禁、誘拐、殺人……はするのに、肝心の怪獣たちの登場には何の役にもたたなかったりするのだ。この3人組が巻き込まれる騒動を描いた短編7本からなる連作シリーズ。
 はっきり申し上げておくが、本書に収められた短編を読んで言えることはただひとつだけである。
 あほくさい。
 むろん、これは褒め言葉だ。何のために怪獣や宇宙人を出しているかというと、きっと作者がそういうものを出したかったからだろうと思う。「通りすがりの改造人間」のように、ストーリーの根幹は改造人間に精気を吸い取られるというところにあるのに、結末は誘拐事件の真相解明だったりするのは、それはもうそういう遊び方をしているのだとしかいいようがない。この脱力感をなんといえばいいのか。
 私、こういうの好き。でも、怪獣と戦う人類の話や本格的なミステリを読みたい人は、まあ読まなくてもよかろう。本書を読んで激怒する人もいるに違いない。私も2本目あたりでは「な、なんやねん」と少し眉根を寄せかけた。が、3本目からは「いやー、お好きですなあ」と気持ちを切り替えて読めた。
 いやしかし、作者も頑固なまでにミステリにこだわるなあ。もういいから観念してSFを書いてもいいのにねえ。

(2003年6月28日読了)


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