読書感想文


報道危機−リ・ジャーナリズム論
徳山喜雄著
集英社新書
2003年6月22日第1刷
定価680円

 個人情報保護法案に対し、報道の自由を言い立て反対しても世論ガ必ずしもついてきてはくれない。過熱する事件報道によって人権を侵害されたと憤る事件の被害者たち。許認可権を政府に握られ営業にふりまわされるテレビ。特落ちを恐れて横並びになる新聞。朝日新聞の記者として報道の現場に長く関わってきた著者が、マス・メディアの問題点を指摘し、インターネットにより一般市民が情報を発信する新しい時代の潮流を明らかにしていく。その上で、日本ではまだ確立されてない「ジャーナリスト養成学校」の可能性を、諸外国の事例をあげながら探っていく。
 まず優れたジャーナリストを養成して現場からの改革を試みようとする著者の主張は傾聴に値する。しかし、前半で指摘してきた権力とジャーナリズムの関係を根本的に解決する方法は提示できておらず、そこが残念である。
 報道の現状を知るのに適した一冊。そうではないかともやもやしていたものがうまく整理されている。

(2003年7月1日読了)


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