読書感想文


南海ホークスがあったころ 野球ファンとパ・リーグの文化史
永井良和・橋爪紳也著
紀伊國屋書店
2003年7月5日第1刷
定価1800円

 かつて大阪ミナミに球場があり、そこを本拠地とする緑色のユニフォームを着たプロ野球のチームがあった。球場はその名もずばり「大阪球場」、チームは「南海ホークス」。本書は、このチームの消長を記すだけではなく、都市空間において「球場」がどのような意味を持っているか、あるいは鉄道会社の都市計画に「スポーツ」という娯楽がどのように組み込まれていたのかを明らかにし、また、ファンにとって野球はどのような意味を持っているのか、応援スタイルの変遷がどのようにその時代を象徴しているのかを解明したものである。
 サブタイトルにもある通り、本書の内容はまさに「文化史」にふさわしい。読売ジャイアンツ、あるいは阪神タイガースとは対極にある「南海ホークス」を扱うことにより、大阪という都市のもつ光と影を浮き上がらせてみせる。
 野球を扱った本では、そのチームに所属する選手や監督の戦いぶりがメインとなることが多い。しかし、本書では球団という組織、球場という容器、ファンの応援スタイルが主役である。それらは時代を写し出す鏡である。
 また本書は、失われた過去への哀悼の書でもある。南海ホークスをしのぶよすがは次々と消えていってしまう。著者たちはそれらを書物という形でなんとか現在につなぎ止めようとしてるかのようだ。
 本書は優れた都市文化論である。そして、大阪の文化というものを改めて考えさせてくれる好著なのである。

(2003年7月3日読了)


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