NHKの人気ドキュメント番組の内容をそのまま本にしたもの。本書ではカップヌードルを開発した日清食品のチーム、現金輸送車強奪班をつかまえた警視庁鑑識チーム、通天閣を再建した大阪新世界の商店主たち、沖縄の害虫を20年以上かけて根絶した人々、アンコールワット再建のために現地の若者たちを指導した学者と職人、終戦直後から長野の一地方で集団検診を始めた医師たちのエピソードが収録されている。
私が本書を読んだ目的は、大阪を舞台にした2編、つまりカップヌードルと通天閣について資料がほしかったからである。基本的な線は押さえられ、よくまとまってるので教材として使う分には問題はない。
ただ、読んでいて気になったのは、家族をいかに犠牲にしたかということやら私生活を投げ打ったことを賛美しているということ。番組全体のコンセプトが高度経済成長期の企業戦士を賛美するというものなのだからわかっていたはずなのだが、こうやってまとまったものを読むと、やはりひっかかるものがある。つまり、かえりみられなかった家族に属する世代として、共感することができないのだ。
さら、プロジェクトから脱落した者に対する冷たい視点も気になる。成功者を賛美するのはいいけれど、当然それについていかれなかった者だっているわけで、私はそういう脱落者により強く共感してしまうからである。
同じドキュメントでも、上級のノンフィクション作家が扱うものとはかなり切り口が違う。そこらあたりを比べながら読んでみるのも一興かもしれない。
(2003年8月4日読了)