読書感想文


関西人の正体
井上章一著
小学館文庫
2003年9月1日第1刷
定価533円

 京都生まれの京都育ちの著者が、世間一般に流れている「関西人」に対する風説を否定し、その本来の姿を解き明かそうとした一冊。
 例えば、「東京人」が考える「関西弁」のイメージは、汚い言葉、議論に向かない、といったもの。自分の談話の京都弁を似ても似つかないものに直された経験を持つ著者が、「東京人」の思い込みに対して筋道だてて反論を展開する。
 大阪の「食い倒れ」についても、現在の大阪を代表する食べ物として「お好み焼き」や「たこ焼き」でどうやって「食い倒れ」ろというのかと文句をたれる。京都人の「口と腹が違う」というイメージに対しては、それが京都人のもつ思いやりからくるものなのだと反論する。
 本来「近畿」地方なのになぜ「関西」が一般的になってきたかという疑問を提示し、「近畿」の持つ意味の言葉は「首都圏」という言葉に変換され、実際はもう「近畿」ではなくなったために「関西」という言葉がはびこるのだと指摘する。
 確かに「関東と関西ここが大違い」というような本で描かれるステロタイプな「関西人」のイメージは、時には不愉快な場合もある。しかし、著者は反論のための反論みたいな論法も使っており、本書が本当に「関西人の正体」を書き表しているかというと、首をかしげざるを得ないのは確かだ。
 ただ、関西そのものに接したことのない人に対して、従来のイメージを捨て去ってほしいという思いはわかる。また、「関西」とひとくくりにできない奥深さを「京阪神」それぞれの都市が持っていることを知ってほしいという気持ちも理解できる。
 ここで大切なのは、東京中心のメディアが描くステロタイプな関西人に、関西人自身が影響されてはいけないということではないだろうか。「関西」という地域、そして文化について改めて考えさせられる一冊である。

(2003年8月20日読了)


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