読書感想文


「おまけ」の博物誌
北原照久著
PHP新書
2003年8月25日第1刷
定価950円

 グリコの「おまけ」。少年倶楽部の「付録」。カバヤ文庫。紅梅キャラメルの野球カード。少年月刊誌の「ふろく」。学研「科学」の「付録」。マーブルチョコレートの「アトムシール」。カルビースナックの「仮面ライダーカード」。ビックリマンチョコの「ビックリマンシール」。そして海洋堂の食玩フィギィア……。
 ブリキのおもちゃコレクションで知られる著者が、子ども向けの「おまけ」や「付録」の歴史をたどりながら、時代の変化を浮き彫りにしていく。
 上記の「おまけ」や「付録」はエポックメイキングなものばかりであるが、子どもは、そしていまや大人もこういった+αそれ自体に価値を見い出し、その期待に答えるべく、メーカーも妍を競ってきた。時には射幸心をあおるものと大人の批判を受け、時には時代の寵児として脚光を浴びながら行き先を見失って消え去ったものもある。それらの運命の面白さ、そして哀しさ。
 それにしても「おまけ」のルーツが大阪商法にあるのは自明の理とはいえ、楽しいではないか。顧客へのサービス精神から出たものが、発展し、そして全国を巻き込む独自の文化を生んだ。その「おまけ」の最先端を行く海洋堂が大阪府下の会社であるというのは、偶然とはいえ興味深い事実である。
 カラー図版も豊富で、しかも手に取るように「おまけ」の歴史をたどることができる。「一粒で二度おいしい」というグリコアーモンドキャラメルの広告を思い出させる一冊である。

(2003年8月22日読了)


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