遠縁の子どもたち4人が「本家」の蔵の中で遊んでいたら、いつの間にか人数が増えて5人になっていた。でも、見知らぬ顔はいない。「本家」の蔵には座敷童の伝説が残っているから、この中の1人がそうらしい。一方、彼らの親たちは「本家」の後継者を決める親族会議を開いていた。「本家」に残る伝説では、かつて旅の僧を殺してしまったために「本家」を継ぐ者には子どもが産まれないか産まれても死んでしまうという。だから、既に子どものいる遠縁のものたちを集めて後継者を決めるのだ。そして事件は起こった。夕食のおひたしを食べた父親たちがみな腹痛を起こして倒れたのだ。さらに、子どもたちを誘うようにあらわれる人魂……。大人たちを殺そうとする犯人は? 座敷童はいったい誰?
子ども向けの書き下ろしミステリー叢書の内の1冊。
確かに、序盤から中盤にかけては子どもたちの名探偵ぶりにどきどきさせられる。ところが、座敷童が誰かということが明らかになるあたりから急速にその面白さがしぼむように感じられた。
座敷童の正体が謎解きにからむのはいいのだが、座敷童そのものはミステリーでなく純然たるファンタジーであることと、そして、結末付近でものすごく説教臭くなることあたりが、その原因ではないかと思う。
読者層は小学校高学年あたりを狙っているのか。それならば、「本家」相続の話はもっとどろどろしていてもかまわないだろう。私が小学生の頃は江戸川乱歩の「少年探偵」シリーズだってかなりえげつなかったけれど、それを楽しんで読んでいた。また、子どもに向けた物語だからといって取ってつけたように教訓をいれる必要はない。
作者が子ども向きをかなり意識し過ぎた結果、なんとなくどっちつかずのものができあがってしまったような印象を受けた。私は子ども向けのお話を書く時に、読者を意識し過ぎて失敗してばかりなのだ。そこらあたりのさじ加減に苦しんでいる者としては、自分の失敗と同質のものを突きつけられているようで、ちょっと辛い。
(2003年9月11日読了)