御鳥羽総合建設の建設主任、青峰走也は社長の御鳥羽拓道から老人と少女に引き合わされる。老人はエデン・レジャーエンターテイメント社の会長、桃園寺閃之助。少女はその孫の妙。御鳥羽に依頼されたプロジェクトは月面に結婚式場を作るというプランであった。青峰は妙とともに中国の月面基地に視察に行く。1500億円という限られた予算の中で、機械を送り込んで月面にある水分を利用してセメントを作るところから作業は始まった。月面の結婚式場というアイデアを出した妙の真の意図は何か。果たして計画は予定通り進むのか。
本書で描かれるのは、未来のプロジェクトXである。困難な条件のもとで夢をかなえようとする人々の物語である。未来がテーマであるだけに、それはプロジェクトXのような後ろ向きの物語にはならない。人間の知恵と勇気はまだ行き詰まってはいないのだという作者のメッセージである。
本書では、計画が綿密に描写される。そして、それが人間の実施するものであるがゆえのトラブルの萌芽もここそこに描かれる。壮大なプロジェクトを考え出した天才少女の孤独。採算のとれないような事業でも思い切って行うベンチャー企業の社長など、登場する人物のベクトルは必ずしも一致はしていない。だからこそ、この物語にはリアリティがある。また、リアリティがなければ、この物語は成立しないといっていい。
次巻は完結編。プロジェクトが成功するまでにどのような試練が待ち受けているのか。一気に読んでしまいたくなる2冊である。
(2003年9月13日読了)