阪神タイガースの活躍で、出版界も大阪ブームである。本書は月刊誌に連載されたエッセイをまとめたものだが、初出からわずか4ヶ月ほどでオリジナル文庫として発行されている。
だからといって、本書がお手軽なやっつけ仕事であると思ったら大間違いというものだ。本書は大阪に産まれ育った者たちの心のよりどころを的確にとりあげ、納得できる説明と思わずにやりとするユーモアたっぷりの筆致で楽しませてくれるのである。
阪神タイガース、十日戎、宝塚歌劇、桂米朝、パン、大阪弁、太閤秀吉、北新地……。京都にもない神戸にもない奈良にもない、大阪人気質を象徴する神々たち。京都生れの京都育ちである私などにとっては、新しい発見であったりする。お隣の土地なのに、こうも違うかと驚かされさえする。そして、現在大阪の女性を妻とし、大阪市内に在住し、大阪の高校に勤務する私は、そこかしこに本書に書かれている内容が転がっていることを確認する。
軽く楽しく読めて、そしてちらりと見せる奥深さに感心する。大阪ならでは、なのかもしれない。これが京都だと奥が深すぎて見えなかったりするのだ。また、一見さんには奥を絶対見せないところが京都にはある。大阪は、ちらりと見せてくれるのだ。
そういう大阪の楽しさがつまった一冊。地元の人間でないと書けない面白さだろう。私は、著者が東京で会社員をしていた時に電車の中で落語のテープをヘッドホンで聞きながら通勤していたというエピソードが好きだ。そして、米朝の「たちぎれ線香」を聞いて涙が止まらなかったというところにぐっときた。そうそう、そうやねえ、とうなずくことの多い一冊。
(2003年9月12日読了)