パンツスーツを常に着用する長身の美女アトムと、ゴシック系のドレスを愛するアンティーク人形風美少女ウラン。2人は近づく男どもを殺戮し、切り
刻む。時にはツーショットテレフォンを利用してわざわざ釣り出し、のこのことやってくる男を血まみれにする。血に飢えた猛獣のように。一方では、2人を追
うように現れてくる秘密結社メガロファロスの男たちがいる。彼らは女性を人間とは認めず、女たちを捕らえ、檻に閉じこめる。セクハラに反発する高田理恵、
アダルトビデオに出演する氷室ミル子、デザイン事務所を構える日高秋水……。彼女たちをターゲットにするメガロファルスの男たち。そして、彼らの根拠地を
殲滅しようとするアトム。彼女とメガロファロスの戦いの決着は……。ターゲットにされたウランは……。
フェミニズム小説……なのかな、これは。そう単純に割り切ってしまうのには少しためらわれたりもするのだが。なぜならば、本書は女性の権利などというな
まやさしいものを描いているわけではないのだから。男は女を人間扱いせず、女は容赦なく男を殺しまくる。完全な二項対立の関係に、男と女はある。
作者はまるでフェミニズムをあざ笑うかのように、この二項対立を過激に演出する。支配しようとするものの愚かさ、戦いの果てには滅びしかないのだという
諦念。そういったものを私は感じるのである。カバー見返しに書かれた作者の言葉に「凶暴な女が好きだ」とある。凶暴な女に滅ぼされるのは愚かな男。そし
て、男とは全て愚かなのだと自虐的に微笑む作者の顔が勝手に私のまぶたに浮かんで消えないのだ。
(2003年9月23日読了)