荻原正太郎は曾祖母や祖母から「おまえが女だったら……」と言われつつ、厳格な剣術修行をさせられて育った。ある日、動く死体である〈アンデッ
ド〉が街に現れ、曾祖母たちは〈アンデッド〉と戦った。そして、進学予定だった高校を変更して山奥にある全寮制の女子高「聖白百合学園」に入学することが
一方的に決められる。正太郎はそこで、吸血っ娘と戦うことを目的に育てられている少女たちと出会う。吸血っ娘たちは、戦時中に日本軍がナチスドイツから譲
られた吸血鬼で、彼女らの力で吸血少女部隊を作り、戦争の勝利に役立てようとしていたが、敗戦のために不要となった存在であった。正太郎の曾祖母は、吸血
部隊にさせられかけた少女たちの一人で、彼女の力で封じていた吸血っ娘が封印を破り、現れたのだ。しかし、吸血っ娘を封じられるのは荻原家の血を引く娘
で、処女でなければならない。正太郎には「聖白百合学園」の生徒の一人に子どもを産ませるという使命が与えられているのだ。正太郎、そして「聖白百合学
園」の少女たちと吸血っ娘の戦いの火蓋が切って落とされる……」。
女性の園に男性一人というシチュエーションコメディの設定を使い、それと吸血鬼との戦いをからませるという組み合わせの面白さがある。吸血っ娘や「聖白
百合学園」の少女たちのキャラクターもバラエティに富んでおり、楽しいシリーズとなりそうだ。
ただ、設定上、なぜ荻原家の者だけが吸血っ娘を封じられるのかなどというあたり、まだまだ明らかになっていない部分が多く、これが明らかにならないと物
語が成立しにくくなるようなところもある。今後の展開で明らかにされることを期待したい。
軽いタッチでたのしめる吸血鬼バトルのコメディという感じか。テーマ的にはかなり深く掘り下げられるものだけに、このタッチを保ちつつどこまで不死や永
遠の愛といったテーマを消化できるのか、作者の力量が問われるところかもしれない。
(2003年9月27日読了)