読書感想文


対談 笑いの世界
桂米朝×筒井康隆著
朝日新聞社
2003年9月25日第1刷
定価1200円

 筒井康隆が紫綬褒章を受け、人間国宝の桂米朝が文化功労者に選ばれた記念に、新聞用にセッティングされた対談があまりに面白かったので、追加の対 談をわざわざセッティングして本1冊分にし、まとめたもの。確かに新聞の紙面だけではもったいないと思って読んだ記憶がある。こうやって貴重な対談を本に して残してくれたことに感謝したい。
 内容は、二人の笑いの感覚を作り上げた昔の芸人や喜劇俳優……ローレル&ハーディー、アボット&コステロ、マルクス兄弟、エンタツ・アチャコ、エノケ ン、ロッパ……の話題から、SFと落語、笑いの定義、などなど。話はあちこちにとぶけれども、二人の該博な知識がつまっているから、どんなとび方をしても さほど気にはならない。かえってその内容の濃さと話しの間のよさに感嘆してしまう。
 これはこうやって本にしただけではなく、CDにして二人の会話の「間」も残してほしいものだ。米朝師のあとがきに「わたしは酒も飲まずにろくに物も食べ ずに、何時間もこんな楽しいお喋りをすることは、もう生涯二度とあるまい」とある。そんなお喋り、耳で聞いてみたいと思いませんか?
 対談の締めは、二人が声を揃えて歌う「紀元二千六百年」の替え歌というのが、それぞれにとっての笑いの原点が何かを暗示していて興味深い。笑いは、即ち かしこまったものやふんぞりかえった者を相対化して本質をさらけださせる、そういうようなものなのだと、この替え歌が示してくれている。そんな気がしてな らないのだ。
 楽しく、そしてコクのある上質の対談である。

 (2003年9月30日読了)


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