東大阪市に集まる町工場の、独自の商品を紹介した本。モンキーレンチ、ペンチ、ドライバーといった工具から、国際的に使用されているゴーグル、つ
ぶつぶしゃもじに歯間ブラシ、あんななものもこんなものもみんな東大阪で作られていると思うと驚くばかり。しかも、これらはアイデアの勝利といったものば
かりで、読んでいるうちにモノづくりの楽しさみたいなものが伝わってくる。
東大阪の町工場の特徴は、大企業の下請けをしながらも、これではいけないとそれぞれの企業が独自性のある商品を開発しているというところにある。つま
り、鶏口となるとも牛後とならじという小気味よさがあるのだ。そして、それらの企業が別個にモノを作っているのではなく、自分たちでできないところは同じ
エリアにある他の企業と協力するという体制ができている。こういったところに中小企業のよさがあるのだろう。
最近は東大阪の町工場というとロケットの製作が話題性ではトップにくるが、それもこのような企業が集まって知恵を出しているからできることなのだ。独自
のアイデアで活躍する企業が、アイデアと技術を持ち寄り、大企業にまねのできないプロジェクトを立ち上げる。これこそが東大阪モノづくりワンダーランドの
真骨頂といえるだろう。
読んでいて、何かわくわくしてくる。そして元気が出てくる。いわば企業の商品カタログみたいな本なのだけれども、それ以上のものがここにはある。「プロ
ジェクトX」では決して採りあげないだろうけれど、「プロジェクトX」のような後ろ向きのドキュメントにはない、前向きの楽しさにあふれた1冊である。
(2003年10月3日読了)