本書は「フリーター」という概念をもとに、自分というものの居場所を決められずにいる若者たちの現状を、そして、明治時代の「高等遊民」の定義、
時代によって変わる「勤労」の意味などをいろいろな資料から分析し、意味づけている。時代によって変化する「勤労」「労働」の意味や、「自分を本当に生か
せる働き場所」を求めて「フリーター」になる若者の意識などをじっくりと解析していく。
著者は自分の将来を信じ定職を「決められない」フリーターたちを批判しているわけではない。自分もそうだとしておいて、そしてなおかつ「自分を本当に生
かせる働き場所」を探す方法として「フリーター」という形態をとることに必ずしも賛同しているわけではない。それよりも「フリー」という立場で生きていく
ことの難しさなどを提示した上で、「フリーター」でいられる年齢的限界に達した時の対処をどうするべきかと問いかける。
私たちには、自分がどういう生き方をするかを自分で決めなければならない時期が必ず来る。その時に、「公務員は創造性がない」であるとか「サラリーマン
になると一つのことしか経験できない」というような固定観念を持ってしまい、そのために自ら選択肢を狭めてしまうという視野狭窄に陥りがちである。著者
は、そういう姿勢に対してはやんわりと否定する。そして、「大人になる」ということを定義づけていく。
本書はまさしく固定観念をなくして「フリーター」を見つめ、社会の中で「働く」ということの意味を読者に問いかけている。そして、社会というもののあり
ようを概括していくのだ。
「若者」がわからないという大人や、「仕事」というものをどうとらえていいか迷う「若者」にお薦めしたい一冊である。
(2003年10月11日読了)