読書感想文
ぼくはタイガースだ Being The Tigers.
五味太郎著
集英社
2003年9月30日第1刷
定価1500円
人気絵本作家による楽しいタイガース論。
優勝するときは優勝する。タイガースに根拠なんてないのさ、と言いきってしまった上で、タイガースの魅力を独特のひょうひょうとした素朴な語り口で記し
ていく。副題の英文タイトルは留学中のお嬢さんに作ってもらったものなのだそうだけれど、「タイガースとして存在する」「タイガースとして生きる」「タイ
ガースであり続ける」という響きがいいと、著者は書く。そうなのだ。タイガースファンになったら、生き方もなんとなくタイガースになってしまう。
また、本書では作者はテレビのカメラアングル、解説、そして野球全般について実に率直な意見を発している。長年観戦をしていると当たり前のようになって
見えなくなるようなことも、著者はちゃんと見ているのだ。そして、それらもろもろを含んでタイガースが好きだというのが結論であったりするのが何とも楽し
い。だから、本文中でも率直に「便乗出版という面もある」などと書いたりしている。こうはっきりと言い切ってしまうのは、実は照れなんだろうなと思う。そ
の照れが、いい。
阪神勝った、星野勝った、どんちゃかどんちゃか、というような便乗本ではない。実は書きたくても書く場のなかった著者の野球に対する思いがこめられた
エッセイなのだ。でも、それをむきだしにするわけでもない。含羞、という言葉がよく似合う。そして、実はタイガースのファンにはこういう人は多いのだよな
と思う。そして、そういう人もこうやってタイガースを語れるという、今年はいい年だ。
(2003年10月19日読了)
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