阪神電鉄というと、関西以外だと阪神タイガースの親会社というイメージしかないだろうし、関西人にしてみたら、他の私鉄と違い営業キロ数の短い比
較的小さな私鉄という認識だろう。しかし、創立当初の阪神電鉄は違ったのである。阪急の先をいって先進的な技術を取り入れ、「待たずに乗れる阪神電車」の
キャッチフレーズで国鉄を凌駕していた時期もあったのである。甲子園球場の建設などもその時代のたまものなのだ。しかし、戦時中の被害、占領軍による資産
の供出などで基礎体力が落ち、拡大を続ける他社に対し、自社の資産を守る堅実な経営で立て直しを図ったのだ。そして、それは高度経済成長期もそうであり、
バブル景気のときもそうであった。したがって、バブル崩壊の時も不良債権を抱えることはなかった。しかし、阪神大震災では被害が一番大きく、そこからの再
建をなんとか果たすまで時間がかかってしまった。
本書は、そういった阪神電鉄の歴史をたどるとともに、タイガースファンの攻撃の種になる「シブチン経営」の実態を詳細に書き記している。そして、タイ
ガースをブランド商品として売り出し、ソフトを充実させる方向に進んでいる現状を報告する。
本書は鉄道ファン向けに書かれたものなので、鉄道経営のデータや車輌導入の変化などが中心となった構成である。しかし、近畿地方の発展のために阪神電鉄
が果たした役割など、今では忘れられようとしている事実をわかりやすく伝えてくれる。本書と阪急や小林一三について書かれたものを比較しながら読むと、鉄
道を基調とした近畿地方の都市作りの経緯がよくわかる。
タイガース優勝便乗本が多い中で本書も企画されたものだとは思うが、鉄道経営という視点で書かれた本書は異彩を放っているのである。
(2003年10月24日読了)