読書感想文


われらロンドン・シャーロッキアン
河村幹夫著
ちくま文庫
1994年1月24日第1刷
定価757円

 著者は三菱商事の取締役をつとめた人物。ロンドン駐在中に趣味が高じてシャーロック・ホームズ協会に入会し、ホームズを通じてロンドンっ子たちの性質やイギリスの文化をより深く楽しむようになった。本書は、そのようなロンドン生活の一端を描いたエッセイ集である。
 保守的で、でも新しもの好きで、他人に干渉はしないが、他人についての好奇心は旺盛にもっている。一筋縄ではいかないのがロンドンっ子の特徴だということが、本書ではわかる。これを読んで感じたのは、そういった点など含めて京都人と非常に共通した点が多いということだ。趣味人が多いというのも共通している。架空の人物にここまで夢中になって遊べる、いや、遊べないと一流の紳士淑女とはいえない。ここいらあたりに京都人に共通する粋な感覚が見い出されるのである。
 肩のこらない読み物ではあるが、ロンドン、そしてシャーロック・ホームズという存在が背景にあり、その奥深さも感じさせてくれる。楽しい一冊である。

(2003年11月2日読了)


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