第3回小松左京賞受賞作品。
好きな子が志望したというだけで選んだゼミには飛び級で入学した16才の天才少女がいた。卒論すらどうすればよいかわからない、就職もおぼつかない僕は、彼女と組んで「宇宙は作れるか」という問題についてディベートしなければならなくなった。彼女は巨額な資金をつぎこんだプロジェクトにも関わっていたが、いろいろと行き詰まってしまっている。彼女の足を引っぱりつつ、僕は「宇宙の作り方」という「神様のパズル」を解かなければならない。果たして僕と彼女が出したパズルの答えは……。
平凡な学生と天才少女という組み合わせで、凡庸なストーリーならば平凡ながら突如彼女のためにひらめいて助けてみたり、あるいはちょっとしたロマンスがあったりするだろう。しかし、本書はそういう展開はみせない。平凡な主人公は自分のことで手一杯な上に、彼女に助けられることもしばしば。
テーマの一つである「神様のパズル」を解き明かしていくところなどは、追い込まれた少女の心理なども含めてわくわくさせる展開である。主人公を含む登場人物たちも様々な経験を経て成長していく。
それなのに、なにか物足りない気分が残るのはなぜだろう。リアリティがないとはいわないけれど、例えば主人公が田植えを手伝わなくてはならないあたり、やはり無理があったりする。もちろん田植えを手伝うことに大きな意味はあるのだけれど、なにかわざらしいのである。作為的で浮いてしまうのだ。
読了後、カタルシスがないというのもあるかもしれない。パズルを解くのは少女であるし、主人公は実は何も達成し得ずに(得たものはあるにせよ)するっと卒業してしまう。「パズルを解く」というところをエンターテインメントとして出しているわけでもなく、登場人物たちの成長がテーマでもない。ここらあたり、小説にどういう面白さを求めるかの問題ではあるかもしれないけれど、作者の今後の課題であるように思う。
(2003年11月23日読了)