平家物語を下敷きに、源義経を陰陽師に仕立て上げるという大胆な設定で描かれる伝奇アクション。
木曽義仲にとりついた蘆屋道満の霊は、都を混乱に陥れようとしていた。兄頼朝のもとに身を寄せていた源義経は、馬李阿と名乗る異国の女性にいざなわれて都へ戻る。そこで引き合わされたのはなんと狐の姿で生き延びていた安倍晴明であった。晴明より自分の本当の素性を教えられ、陰陽師の最高の術であるシキガミの法を伝授された義経は、義仲と戦う。さらに、九郎判官を名乗り都を惑わせる謎の敵や、平家のもとで巨大な力を持った存在「クスリ」を蘇らせようとする者など、義経は次々と戦いの場に引き寄せられていく。
陰陽師ものは数あれど、ここまで大胆な設定にしたものはそうはない。あの手この手と出尽くした感のある「晴明」ネタではあるが、これぐらい想像力を飛躍させないと新味は出ないのだろうと思う。そのためにいささか苦しい理由づけをしているのも事実であるが、そこは作者のこと、地口も織りまぜながらなんとか乗り切っている。
女性作家の書く陰陽師ものはその術の使い方に凝る傾向があるように思うが、作者の場合は敵の存在にクトゥルー神話を想起させる要素を持たせ、戦いの結果がどうなるかというあたりに力点を置いているように思われる。そのため、ヤングアダルトの伝奇アクションとしてはかなり異質な作品に仕上がっている。いい意味でも悪い意味でも作者でなければ書かれない作品であったといえるだろう。
(2003年12月5日読了)