2002年1月に早逝した落語家、桂歌之助の残した文章、川柳、そして創作落語をまとめた一冊。朝日新聞の連載エッセイをリアルタイムで読んでいた時に、わかりやすく楽しい文章を書くなあ、うまいなあと感じたことを思い出した。例えば、本書に収録された禁煙日記。煙草をやめて10日目のいらいらしている様子を書いたものなど、そうかんたんには書けないものだと思う。いらいらしている自分を客観的に見つめて、それを主観的に書きながら読み手を笑わせるという、これはまさしく「藝」である。
私は著者の生前、熱心なファンとはいえなかったけれど、私が見ている数少ない高座の一つ一つが印象に残っていることを、今さらながらに気づかされた。それは、創作落語「古事記伝」のテープ起こしを読んでいて、今から20年近く前に聞いたのにその口舌がまざまざと蘇ってきたと書けば、わかってもらえるだろうか。
直截な表現で人間心理をみごとに描写した川柳。立川談志の落語論に対する批評。その視点の確かさを示した好例である。
落語ファンのみならず、多くの方たちに読んでいただきたい好著である。
(2003年12月9日読了)
本書ご購入に関してはこちらまで。