2004年度より高等学校でも本格的に導入される「総合学習」の時間。本書は、大阪府立高校で総合的な学習や総合学科で実践をしている教諭たちの考え出した単元を収録し、その狙いや実際にやってみて得られた結果を記したものである。
総合的な学習を特徴づけるものとしては、教科の枠を取り払うこと、自分たちでやらせたり考えさせたりすることなどをあげることができる。知識や教養を教授されるのではなく、自分で見つけ出させるのである。いわば、アルキメデスが「エウレカ!」と叫んだ、あるいはヘレン・ケラーが「ウォーター!」と自覚した、その瞬間を学校という空間で作り出していく、そういうことなのだろう。
これを実践することは、非常に難しい。新しいものを作り出す教師の熱意、そしてそれを受け止める生徒たちの開かれた心が必要だからだ。本書の巻末に置かれた座談会では、実践を積み重ねてきた教師たちの熱い思いを知ることができる。そして、私もまた実際に総合学習というものに関わっていかなければならず、こうした教師たちの熱意に対抗できるようなエネルギーが必要とされていることを実感せざるを得ない。
現実には「学力低下批判」論争など、総合学習という大きな実験に対する風当たりは少しずつ強まっている。私自身も「総合学習」というものに懐疑的になることもある。しかし、賽はふられたのだ。
本書の実践を見ると、生徒に自信をつけさせることや自己を肯定させようとすることに主眼が置かれたものが目立つ。それだけ高校生にとって将来に対する見通しが立たない時代なのだと痛感せざるを得ない。そんな視点で本書を見ると、現代の日本社会が危機的状況にあるということを示しているといえるだろう。果たして「総合学習」は本当にそういう状況を打開するカギになるのか。
(2003年12月18日読了)