光源氏の没後、残された息子の薫中将と孫の匂宮を主人公にして、宮中にうごめく妖異を退治していく。本書には短編3本が収められている。
「鯰中納言」は、自分の父の悪霊にとらわれた中流貴族が、疫病と強盗で滅びた貴族の亡霊に目をつけられ、命をとられるところを、若き陰陽師の白鴎の力を借りて救い出す。「行くなの屋敷」では、匂宮を探していた女房、萩野が行方不明になる。彼女は〈行くなの屋敷〉と呼ばれる場所に引きずり込まれてしまったのだ。白鴎の師匠、益荒男の手助けもあり、二人は入ると二度と出られないという〈行くなの屋敷〉に潜入する。「神獣妖変仙人鏡」は、下級貴族の家に産まれた少年が妖しの鏡に吸い取られてしまい、その少年に自分の姿を重ねて見ていた薫中将が鏡の魔力に立ち向かう。
光源氏を主人公とせず、その子どもたちの物語としたところに、作者らしい屈折した設定だと感じさせるところがある。父親の幻影にとらわれながら宮中に生きる彼らの姿は、確かに負の魅力を放っている。しかし、それに対して、それぞれの物語は「晴明百物語」と大きく変わるものではなく、主人公たちの設定を生かし切っていないように思われる。やはり、作者の魅力は怨念を徹底的に描く長編でこそ読みごたえを感じさせるのではないかと思われる。
(2003年12月25日読了)