著者はレヴィナスの研究家だから、本来は実存哲学に深く興味を抱いているはずであるが、それても本書では「実存主義は構造主義に負けた」と断言している。それは、単に論争としての敗北ではなく、現実の社会で一般的に構造主義的な考え方をする人が大半を占めているという事実に基づいてそう断言しているのである。
では、構造主義とは何か。著者は、ソシュールの言語学が構造主義の地ならしをし、フーコー、バルト、レヴィ=ストロース、ラカンの4人が確立したとして、彼らの考え方をわかりやすく、噛み砕いて解説する。
私は、授業で構造主義の基本的な考え方をとりあげたことがあるが、完全に理解できていたわけではない。そこで、今回本書を読んで、欠落したものを埋めようと思った。そのために本書を選んだのは正解だったといえるだろう。社会の構造が人間そのものを規定し、言葉が存在の価値を作り出す。その仕組みがここでは明瞭に示されているのだ。
まさに、「寝ながら学べる」というタイトルにふさわしい入門書であろう。著者はあとがきで「レヴィ=ストロースは要するに『みんな仲良くしようね』と言っており、バルトは『ことばづかいで人は決まる』と言っており、ラカンは『大人になれよ』と言っており、フーコーは『私はバカが嫌いだ』と言っているのでした」と書く。まあ、ここまで極端に要約する必要はないのだが、それくらい咀嚼してしまっている、楽しい本なのである。
(2003年12月25日読了)