18年ぶりの阪神タイガース優勝。その影には、「裏方」と呼ばれる人たちの貴重なサポートがあったことはいうまでもない。本書では、長年ブルペン捕手をつとめてきた西口捕手、金本とともにカープより移籍してきた多田打撃投手、若虎のよき教育係であった梅本虎風荘寮長、現役時代の栄光を忘れて選手指導に徹する和田総合コーチ、科学的トレーニングで故障者減らしを達成した前田トレーニングコーチ、データ収集で作戦に貢献した渡辺スコアラー、星野監督の黒子役に徹した島野ヘッドコーチ、二軍で若手を鍛え上げる水谷打撃コーチ、投手の気持ちを汲んだ起用に手腕を見せた佐藤投手コーチ、試合終了までの完全中継でタイガースとファンをつなぐサンテレビの栗田ディレクターと湯浅アナウンサー、元代打男とその猛練習を支えた元用具係の川藤氏と小笠原氏、そしてドラフト1位で入団しながら夢破れ、打撃投手で再起を期すも結局解雇されてしまった安達元投手……。これらの人々がどのように考え、どのようにチームに貢献してきたかを、現場取材の長いライターや記者たちの手で記したものである。
裏方というと、つい打撃投手だけに目がいくものだが、ここまで多面的に「裏方」をとらえたものはあまりない。しかも、本書はその姿を描くだけではなく、それが「優勝」という成果に結びついたという芯をもっている。それだけに、一軍選手の華やかな姿や熱狂的なファンの様子を今年の状況だけ急遽取材したような本とは違う、著者たちの心意気が伝わってくるのである。
今年数多く出たタイガース本の中でも、特筆すべき好著ではないだろうか。
(2004年1月2日読了)