読書感想文


スター・ダックス
草上仁著
朝日ソノラマ SONORAMA NOVELS
2003年12月31日第1刷
定価1238円

 宇宙の星々であらゆる詐欺をしてきたショウは、師匠のピークと組んだ最後の仕事で、稼ぎをすっかりとられてしまった上に、師匠の代わりに逮捕されそうになる。ほうほうのていで逃げ込んだ辺境の惑星、ヴィトゲンシュタイン王国では、国王が自国の産業として「犯罪」と「防犯方法」をセットにして輸出していた。ヴィトゲンシュタイン国王に雇われたショウは、色仕掛けで男を落とすヴァイ、スリの名人テイラー・サム、暴力と運転技術が売り物のザカール、天才ハッカーのゾークとチームを組まされ、最近市場解放したばかりのログライ共和国に潜入する。カモは、共和国で国の金を使って自分の資産を増やしているフォン・ブラウン。果たしてショウはフォン・ブラウンをうまくひっかけることができるのか……。
 宇宙を舞台にした、コン・ゲーム小説である。むろん、宇宙を舞台にしているのだから、その設定を生かした騙しなども入ってくる。コン・ゲームの面白さは、虚々実々のかけひきにある。本書は、二重三重の駆け引きを駆使して、どちらが勝つか最後になるまでわからないよう仕掛けている。
 さらに、主人公たち「ドリーム・チーム」のキャラクターも、その得意な犯罪に合わせて個性豊かに描きわけられている。急造のチームであるための失敗なども折り込み、こちらの人間関係も最後まではらはらさせてくれる。
 肩の凝らない、そして上質のエンターテインメントである。どうやらシリーズ化もできるような設定になっているから、チームが絶妙のコンビネーションを発揮するエピソードも期待できる。SFファンにも、そしてミステリファンにもお薦めできる小味な秀作である。

(2004年1月10日読了)


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