読書感想文


歌舞伎と人形浄瑠璃
田口章子著
吉川弘文館 歴史文化ライブラリー
2004年1月1日第1刷
定価1700円

 出雲のお国が創始したといわれる歌舞伎はどのような変化を経て現在に至るのか。また、人形浄瑠璃はいつ頃から発生して、どういう経緯で現在の形に落ち着いたのか。著者は、歌舞伎を肉体表現を中心とした女性原理、文楽を言語表現を中心とした男性原理の芸能と位置付け、その原理がどのように絡み合って互いを刺激しあい、発展させてきたかを本書で明らかにする。
 歌舞伎が流行すれば文楽の人気がなくなり、幕府の取り締まりなどで歌舞伎が弱ると文楽が人気を出す。近松門左衛門の登場、歌舞伎批評書の刊行、人気役者や人形遣の新しい演出など、本書では時代の変遷を追いながら、観客がこの二つの芸能に何を求めていたのか、上方と江戸の違いは何なのかなどをわかりやすく説明していく。
 歌舞伎と文楽の違いを「女性原理と男性原理」という二項対立軸でわかりやすくした上で、それぞれの芸能が二つの原理を溶け合わせていく様子を示すことにより、著者は歌舞伎と文楽の生き生きとした歴史を描き出すことに成功している。古典芸能に関心のある人も、また江戸の町人文化に関心のある人も、本書によって新たな面白さを知ることができるだろう。
 私のようにこれらの芸能にそれほど詳しくないものであっても、その魅力を味わうことができる。古典芸能の楽しみを深めてくれる一冊といえる。

(2004年1月13日読了)


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