作家、音楽家などのクリエイターだけに関係していた「著作権」は、インターネットが発達した現在ではサイトのコンテンツを作るもの全てに関わるものになっている。つまり「一億総クリエーター、総ユーザー」時代なのである。本書では、「著作権」とは何かを詳しく説明しあと、現在の著作権法の抱える問題、そして日本で起こりがちな問題などをわかりやすく解説している。
例えば「著作権」と「著作隣接権」はどう違うか。「著作権」に関する法整備はどう進められてきたか。本書を読めば、すぐにわかる。コンテンツを作った者は、自分の作成物を無断で他人に使用されたくない。使用する側は、他人の作ったコンテンツを無制限で自由に使いたい。その利害の不一致を調整するのが法なのだ。
日本は著作権に関しては欧米よりも遅れているという人を見かけることがあるが、実はその反対で、特にアメリカはインターネットのコンテンツについては無法地帯に近いのだという。日本はむしろ著作権法先進国なのだ。では、なぜそのような言説がまかり通るかというと、日本では「契約」の点で非常に遅れているからなのだという。特に出版業界は口約束が多く、それがもとで起こるトラブルは後を絶たない。
本書は「著作権」に特化した解説書である。しかし、よく読めば、「法律とは何か」、「契約とは何か」ということを根本的に明確にするという一般性を持っている。国会で作られる法律と、官僚が作る規則との違いなどが、「著作権」を通じてわかるようになっている。
著作権に限らず、権利とは何か、自由とは何かということを秩序だてて知りたい人には、かっこうの解説書である。そして、自分の権利を守るためには法律を作ってもらうのを待つだけではなく、自分がまず努力をすべきだということが明らかにされるのである。
(2004年1月22日読了)