阪急ブレーブスの黄金時代を築き上げ、日本ハムファイターズでも優勝は逃したものの弱小球団を2度も優勝争いするまでに鍛え上げた上田利治監督。関西大学で村山実とバッテリーを組んだ捕手であったが、カープでの現役時代はわずか3年。25歳でコーチに就任し、指導者として若い頃から高い評価を受ける。ブレーブスの西本幸雄監督に請われて阪急へ。西本監督の後を継いで監督に就任し、2年目でリーグ制覇と球団史上初の日本シリーズ優勝を成し遂げる。4年連続のリーグ優勝、3年連続の日本一。日本シリーズでの1時間半をこえる審判への抗議を機に退団。体調が戻ると再びブレーブスのユニフォームを着、リーグ優勝を果たす。阪急からオリックスへと親会社が変わっても引き続き采配をふるうが、神戸移転時に退団する。そし、解説者を経てファイターズ監督に。通算1322勝を記録し、野球殿堂入り。
殿堂入りを記念して3人のスポーツ紙記者が書いたもので、上田監督のいわばよかったところを抽出したつくりになっている。だから、ファイターズ監督時代に起こった、家族の新興宗教入信問題などの”恥部”には深入りしていない。確かに上田監督の野球に対する情熱、知識などは、サンテレビでの解説を聞いていたらよくわかるし、本書を読むとその指導者としての手腕がどのように育まれたものかも知ることができる。しかし、これほどいいことずくめだと、読み手としては実は面白くない。長所も短所も含めてありのままを描くことによって、その人物の魅力もよりはっきりと現われてくるのではないだろうか。
スポーツ紙の記者が書くと、そこらあたりに何か物足りなさを感じることが多いと思うのは偏見だろうか。私には、取材対象を読者に知らせる役割の記者と、取材対象から物語を紡ぎあげる作家の違いというものが感じられてしまうのだが。
(2004年2月1日読了)