地球上に「災厄」が起こり、生き残った人間はわずか2〜3億人。大地から作物は消え、生き残った人々は漁撈生活で命をつないでいた。ウミツ島に住むテツユキは海岸に漂着していた少女、るるなをひきとることになった。るるなの村では魚がとれなくなり、るるなは口減らしに妹が殺されるところを身替わりになって海に飛び込んだのである。ウミツ島では猫のしまが生きるために海に跳びこんで魚をとる方法を覚えた。しまは海岸に流れ着いていたるるなを発見した時に、自分の母親の生まれ変わりだと信じる。テツユキとるるな、そしてしまの共同生活が始まるが、ウミツ島でも魚はとれなくなる一方。生物学者で図書館司書のダイスケは、沖合いに鯨を発見した。どうやらその鯨が入り江の生態系を破壊し魚がとれなくなったらしい。鯨を沖に返そうとするテツユキだが、海洋資源を保護する機関はテツユキたちが鯨に手を出すことを許さない。島の人々と、そして猫たちの運命は……。
人の視点、そして猫の視点をたくみに織りまぜながら、日々の生活を守ろうとする登場人物のささやかな営みを暖かく描いたもの。「かもめのジョナサン」を思い起こさせる猫のダイビングや、テツユキとるるな、そして島の娘サクラの淡い恋物語など、青春小説の定石を押さえている。好感の持てる物語である。
ただし、私としてはこの毒のなさには少し物足りないところがある。こういった危機的状況で、これほど善人たちばかりで生き抜いていけるものなのか。それとも生き抜いていくためには一人で他を出し抜くような悪人の存在の余地もないものなのか。定番は押さえているが、定型から脱し切れていない、そこが安心して読めるよさではあるが、逆に物足りなさを感じるところでもあるのだろう。
(2004年2月8日読了)