読書感想文


やっとかめ! 大名古屋語辞典
清水義範著/なかむら治彦画
学習研究社
2003年9月12日第1刷
定価1500円

 清水義範による「名古屋国」の「名古屋語」辞典である。名古屋の言葉の辞典としても使えるが、東京文化に対する「名古屋文化」の比較対象論としても読めるし、名古屋そのものを味わうエッセイ集としても読める。
 本書は普通の国語辞典でいえば三訂版である。最初はCD−ROMと書籍版で1994年に出版され、次は角川文庫から1998年に改訂版が発行された。そして本書である。私はそれらが出るたびに購入している。名古屋には幼い頃に1度しか行ったことがないにも関わらず、である。言葉は文化である。ほぼ5年ごとに改訂されているということは、そのたびに内容を比較すると、文化の変容が手にとるようにわかるからである。そして、本書は一つの地方文化を対象にして、それを整理した形で、しかも笑いという上質の味つけをして呈示したものである。上方を中心とした地方文化というものに関心を持つ私には、上方文化以外の地方文化がその存在感を主張している書物というだけで、なんだか嬉しくなってしまうのである。
 狭い島国であっても、日本の地方文化の多様性には驚かされることが多い。名古屋は大阪や京都にかなり近い。にもかかわらず、明らかな違いがある。そして、それはマスメディアによって画一的に伝えられる平板なものとは違い、奥が深く、汲めども尽きない魅力がある。
 本書は、清水義範の文章となかむら治彦のマンガにより、仲間意識が強く利に聡く少しばかり図々しく見栄もはるがつつましくもある名古屋文化の魅力を私のような異国の人間にも手にとるように伝えてくれる。そして、「日本人は単一民族だ」というようなためにする嘘臭い言説をもののみごとにぶち破ってくれるのである。

(2004年2月9日読了)


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