ペリーが浦賀にやってきた当時の日本とアメリカの状況をおさえ、ペリーの目的、アメリカの本当の目論見、そして江戸幕府の当時の対応について解明したもの。幕府はオランダ商館よりかなり正確な情報を入手し、ペリー来航をちゃんと予測した上で対応していたことや、新興国であるアメリカの精一杯の示威行動が黒船4隻であったことなどが明らかになる。
特筆すべきは、当時の幕府の外交方針が自国の状況と諸外国の動向をきちんと踏まえた上で、実に冷静に決められていたことである。日本の鎖国は決して国を閉ざしていたのではなく、多面的な貿易は逆に自国に不利益になるという判断のもとに続けられていたのである。
私たちは「鎖国」という言葉からつい江戸時代は外国を無視して自国の殻に閉じこもった時代だと勘違いしてしまいがちだが、オランダとの交易や情報交換を有効に使っていたということを忘れてはならないのである。そして、国益という言葉の意味を江戸幕府の外交から再度問い直す必要があるのだ。
外交というものを幕末にたちかえって考えさせてくれる一冊。外交とは大国に追随するものではないのだ。それにしても、この当時のアメリカの平和的な外交方針を知るにつけ、大国化するということがどういうことかを思い知らされるのである。
(2004年2月11日読了)