本書は、スペイン語学者である著者が、語学として「関西弁」を論じたものである。標準語はアクセントに核を持つ言語であるが、関西弁はトーンを核に持つ言語であり、言語体系が違うと著者はいう。2つは同じ言葉を母語に持つ、別の言語だという著者の理論的根拠である。
そして、発音、文法などをきっちりと押さえたうえで、関西弁をしゃべられない人にも習得できるようにという「教科書」として本書は執筆されている。
著者は京都の出身であるから、ここで扱われる関西弁は「京都弁」をベースにしたものである。むろん、「大阪弁」「神戸弁」との違いも含めて扱われてはいるのだが。
関西弁の歴史や、関西弁独特のボキャブラリーなど、多面的に関西弁をとらえ、しかも用例にはわざとボケをかましたりするなど、学者の著作とはいえ楽しいものになっている。関西弁圏以外の人がなぜうまく関西弁をしゃべることができないのか、どうすれば習得できるのか、本書はよい手引きになるだろう。
これは、京都に生まれ外国語を学び北海道で生活しているという著者の経歴があってこその著作だといえるだろう。本文中で著者も語っているが、関西を出てはじめて「関西弁」を客観的にとらえることができた、その成果が本書には結実しているのである。
(2004年2月20日読了)