読書感想文


攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX 虚夢回路
藤咲淳一著
徳間デュアル文庫
2004年1月31日第1刷
定価648円

 士郎正宗原作の人気アニメーションの脚本家が、アニメーションの設定をもとに執筆したオリジナル・ストーリーである。
 2030年、人々の電脳化は進み、いながらにしてネットに接続し様々な情報を活用できる環境が整った。しかし、それを悪用する犯罪もあとをたたず、電脳犯罪を未然に防ぐために組織された「攻殻機動隊」こと公安9課の活躍を描く。ごく普通の少年たちが突如世界への憎しみに対して暴力的な行為に出る〈目覚ましテロリスト〉が次々と発生する。公安9課の草薙素子は、〈目覚ましテロリスト〉となって死んだ少年の入っていた寮を捜査する。そこから得た情報から、〈目覚ましテロリスト〉たちが疑似記憶を体感できる「夢屋」に行っていた可能性が高いことをつきとめる。おりしも中東和平の代表、ナジフが来日。テロリストから彼を警護する9課のメンバーたちと、〈目覚ましテロリスト〉を操る姿の見えない敵との戦いが始まる……。
 そのままアニメ化したいくらい。原作アニメの設定を生かし、電脳化されていく社会にうごめく犯罪をリアリティたっぷりに描き出している。特に、〈目覚ましテロリスト〉事件の解明とテロリストの黒幕との激しい戦いの部分など、読ませどころを心得た書き方である。
 とはいえ、原作アニメを見ないで本書を手にとったとしたら、世界設定の説明やキャラクターの紹介などはやはりわかりにくいのではないか。すんなりと作品世界に入っていきにくいのではないかという気がする。むろん本書を手にするのは基本的にはアニメの方のファンが多かろうから、これはこれでいいのかもしれないけれど、

(2004年3月5日読了)


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