上空を重素雲が覆い、そこには浮獣という生物が住んでいる。人間は浮獣を狩り、生活に必要な食料や物品の材料を得ている。狩をするのはショーカと呼ばれる人々である。喧嘩っ早い少年、リオは、腕利きのショーカであるジェンカという女性に預けられ、浮獣狩りを学ぶことになる。そのジェンカは、レッソーラという相棒が事故による負傷で狩りに出られなくなっていた。経験を積み重ねるごとに成長していくリオは、やがてジェンカの信頼を得、新しい相棒として認められるようになっていく。しかし、リオは知ってしまった。ジェンカがナンバーワンのショーカであるグライドのかつてのパートナーであり、グライドに対する思いがいまだに残っていることを。そし、狩りの途中で負傷したジェンカは実家に引き取られ、会うことすらままならなくなる。リオは再びジェンカとともに狩りをすることができるようになるのだろうか。また、浮獣に秘められた謎とは……。
少年の成長。また、人間の闘争本能に対する提言が、迫力のある空中狩猟のアクション描写とともに描かれる。特に主人公が技能を習得し、集団の一員として受け入れられていく様子は、読んでいて楽しい。作者の作品の特質として、このような技能に対する真摯な姿勢があるといっていいだろう。
ただ、終盤になって浮獣に対するSFとしての真相解明がなされる場面になると、そこまでの躍動感あふれる描写に対して、いささか生硬な印象を与えてしまうことは否めない。説明的になってしまっているように思う。このあたりをもっと自然に描き出せるようになると、作者の作家としての飛躍が期待できると思う。せっかく終盤まで冒険小説的な面白さも備えたものになっているだけに、説明部分の処理でなめらかさを失ってしまうのはもったいないと思うのである。
(2004年3月22日読了)