乙女の憧れ、響ヶ丘歌劇団への登竜門である音楽学校に入学した竜崎まどか、榊由宇、日高忍の3人は、掃除当番で偶然一緒の組となったのだが、お嬢様育ちで高飛車なまどかと下町育ちで喧嘩っ早い由宇は常に衝突する。それを緩和するのは天然少女の忍である。3人は罰当番で掃除をしにいった「歌劇記念館」で、歌劇団創設者の篠原時記が残した予見の書を発見する。そこには歌劇団の危機を3人の乙女が救うと書かれていた。そして、女性が舞台に上がることを阻止しようとし、その手始めに数ある少女歌劇団を解散に追い込んできた「征服座」なる団体がいよいよ響ヶ丘歌劇団にその魔手をのばしてきた。歌舞伎の登場人物を模した珍妙な刺客に、3人の乙女が立ち向かう!
宝塚歌劇団をモデルとして、3人の個性豊かな少女たちが失敗を繰り返しながらけったいな敵を倒し、成長していく青春コメディ。少女たちの個性や歌劇団の生活などが生き生きと描かれており、楽しく読める。
ただ、秘密結社のようなものを出すというのは非常に難しいなとは感じさせた。コメディとはいえある程度のリアリティは必要であり、歌劇団をつぶそうとする勢力に対抗し歌舞伎をもってきたのは私としてはいささか苦しく感じられた。梨園の御曹子とタカラジェンヌの結婚は過去にも多くあるし、歌舞伎そのものは伝統芸能として宝塚以上のファン層を誇っている。そのことを知っていると、歌舞伎を支持する団体が宝塚を標的とするという設定自体に、パロディとはいえ無理があるように感じるのだ。
むろん、響ヶ丘歌劇団は架空の存在であるし「征服座」も実際の松竹芸能とは何の関係もないわけだから、それはそれとして楽しむことはできる。本書を原作として漫画が描かれたらさぞかし面白かろうと思う。つまり、物語の骨格はしっかりしているし、展開も小気味よいのだ。響ヶ丘歌劇団の描写にリアリティがある分だけ、「征服座」が薄っぺらくなってしまっているのが残念なのである。
(2004年3月28日読了)