飛行機が発明され、日本に入ってきた時に、この画期的な乗り物はどのような受容のされ方をしたのか。また、その結果、どのような影響があったのか。本書は多数の図版とともに明治、大正、そして昭和にいたる日本人の飛行機受容の歴史をたんねんにたどり、それによって日本人の意識はどのように変化していったのかを分析している。
著者の明治以降のモダン都市文化研究の一環として、本書では飛行機という存在がテーマとして選ばれている。最初は見せ物として人気を集め、続いては飛行機に乗り操縦したいという願望に結びつく、というだけではない。人々が飛行機に託した思いが、当時の未来予想などに顕著に現れているのだ。そこには空中に突き出すように建築されたビルディング、高架の鉄道、そして飛行機がセットとして描かれる。
人間が得ようとしてもなかなか得られなかった空中飛行を可能にした飛行機が、人々の希望の象徴になったことは想像に難くない。また、飛行機の発達により、人々は「空中からの視点」を手に入れた。それらはアートにも影響を与えるようになる。
見せ物として喜ばれた飛行機は、やがて軍により兵器の一つとして使用され、航空ショーも戦意昂揚の具と化していく。
新しいものは人々の夢をかきたてると同時に、新しい課題をも突きつけていく。希望と現実の狭間にで人々が見た夢にはどのような意味があったのか。本書が投げかける問題の重みは、どのような時代にも共通なのではないだろうか。
(2004年3月31日読了)