著者は化粧文化の研究者。世に美人論は多いが、不美人を論じたものはあまりない。そこで、顔というものに注目をし、江戸以来人々は美人をどう論じてきたかを検証し、「不美人」の定義を考えていく。
著者自身が幼い頃から祖父に不器量であるといわれ、自分が美人でないと定義した上で、自分の体験をやや自虐的に笑いのめしながら、まず美人とは何かを探る。そのタッチがこういった教養新書には珍しくエッセイ風で楽しく読める。
本当の美人というものは何万人に一人でしかなく、理想的にバランスのとれた顔というものは実は印象に残らない顔なのだとした上で、美人でない者はその個性ゆえに不美人であってもかまわないのではないかと結論づけながらも、それでも美しさを追求せずにはおられない人の心を様々な資料を元に論じている。
面白いことに、美人の定義には時代や文化の違いがあっても実は普遍性があるようである。そして、江戸時代の女性も現代の女性も美しくなるために涙ぐましい努力をしていることにかわりはないのである。
美人という「ナンバーワン」ではなく個性的な不美人という「オンリーワン」でいいじゃないかという書き方には、なんだかごまかしたような印象が残ってしまったが、それ以外は非常に興味深い論証がなされている。人相というものは実に不思議で、かつ貴重なものなのである。
(2004年4月17日読了)