読書感想文


魅惑の球団近鉄バファローズ 逆境からの反撃
由比精一著
新風舎
2004年5月15日第1刷
定価1400円

 大阪近鉄バファローズの球団史をコンパクトにまとめたもの。
 結成時のエピソードから、4回のリーグ優勝に至るまでの道のりが綴られている。
 著者は新聞記者、あるいはスポーツライターというプロの書き手ではないらしい。また、佐野正幸のような私設応援団の一員というスタンスで書いているというわけでもない。つまり、純粋なファンの一人として球団史をまとめたというわけである。
 したがって、著者の思い入れの強い、鈴木啓司、西本幸雄といった人物に関してはかなり思い入れのある筆致で描いている反面、野茂英雄のようなプロ野球史に残る選手でも自分の思いがない者に対してはしごくあっさりと片付けている。つまり、球団史としては偏りがあり過ぎるのだ。また、パールス時代のエピソードなどは調べているのかいないのか非常に簡単にすませている。千葉、三原といった人物に対してもジャイアンツ出身という理由からか冷ややかな書き方である。
 実際に自分が知っている範囲のことだけを詳しく書くのなら、球団史という体裁をとる必要はないだろう。球団の歴史を描くのであれば、自分の知らないことは書物や新聞の縮刷版などで徹底的に調べて書くべきだと思う。そういう意味では本書は期待していたほどのできとはいえないと感じた。図版が一切なかったり、球団創立以来の記録や年譜など資料的なものもないのもこの類いの本に期待されるものが欠落しているといえるだろう。
 将来の展望を非常に明るく書いているが、球団名をレンタルする話などの現在の窮状に一切触れてないのはおかしな話だ。この著者がバファローズというチームの歴史を語るにふさわしいと出版社が判断した決め手はどこにあるのだろうか。

(2004年5月29日読了)


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