読書感想文


〈美少女〉の現代史 「萌え」とキャラクター
ササキバラ・ゴウ著
講談社現代新書
2004年5月20日第1刷
定価700円

 〈美少女〉キャラに「萌え」る若者たち。アニメ、漫画、ゲーム、そしてフィギアと〈美少女〉キャラは一つの市場を形成しているといえる。本書は、そういった〈美少女〉キャラが生まれてきた経緯、その変化、そして今後どのように発展していくかなどを鋭い視点で分析したものである。
 まず、「キャラ萌え」は女性たちの間から始まったと、本書は説く。テレビアニメ『海のトリトン』に対して自然発生的にファンクラブができ、同人誌が作られ……。これは『宇宙戦艦ヤマト』に続き、巨大ロボットものの美形敵キャラへと続いていく。一方、男性は、吾妻ひでおの漫画のヒットからSFファンの漫画やアニメに対する垣根が低くなったことに端を発し、SFファン以外にも少年漫画のラブコメブームという形で広がっていく。
 著者は〈美少女〉の定義を『ルパン三世 カリオストロの城』に登場するクラリスに求める。そして、クラリスに対するルパンの行動から、〈美少女〉に対する男性のスタンスの変化を見い出していく。ここらあたりの分析は、同時代をリアルタイムで経験してきた私にはよく理解できた。
 また著者は『風の谷のナウシカ』と『超時空要塞マクロス』でそれぞれの美少女の果たす役割から共通点を見い出し、〈美少女〉と世界のつながり方に一定の方向性があると分析していく。
 すべてが〈美少女〉というキーワードを視点の中心にすえられた論であり、その分析の細やかさや的確さに感心するばかりだ。ただ、〈美少女〉に力点がいく余り、例えば「萌え」ない男性は〈美少女〉をどうとらえているかなど、消化し切れていない部分があるように思える。
 しかし、男生と女性の関係を〈美少女〉と「萌え」という視点からとらえ直していくという野心的な試みは一定の成果をあげたのではないだろうか。今後の著者の論考がどう発展していくのか、しばらくは目が離せそうにない。

(2004年5月30日読了)


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