「たたかう! ニュースキャスター」の続巻。
富士桜テレビの「熱血ニューズ」でお天気キャスターをつとめる桜庭よしみは、実は宇宙人と同化したためにスーパーガールとなって人々を守るという裏の姿をもっていた。しかし、せっかく念願のニュースキャスターとなれるチャンスがあっても、大事件のたびに人名救助を優先させなければならないために、番組をすっぽかしてしまうはめに陥る。東京アクアラインで大型船が高速道に激突するという惨事に〈正義の味方〉としてかけつけたために、彼女は今回もやっとのことで手にしたレギュラーを外されてしまう。自己現場にいた謎の女性の命を救ったよしみだったが、実はその女性は国土交通省の若き官僚であった。「熱血ニューズ」のスタッフとともに国土交通省に突撃取材にいったよしみは、機密事項を隠そうとする官僚たちに追われる身となる。一方、「B型暗殺教団」を名乗る愉快犯たちが町で迷惑をかける者に攻撃を仕掛けるという事件が起こっていた。官僚たちはこの愉快犯を利用して高速道路民営化の中心となっている委員を暗殺しようとする。国土交通省直属の〈掃除屋〉に捕まったよしみは、巨悪の陰謀を叩きつぶすことができるのか……。
前作では正義の味方として世の中の役に立つごとに私生活は不幸になるという主人公の悲哀を軸に描くことができたが、本作ではそれは設定でしかなく、主人公が戦う巨悪の陰謀と、その中で良心との葛藤に苦しむ女性官僚を主題にしている。
となると、その巨悪の陰謀がいかにリアリティを持つか、それに対してデフォルメされた正義の味方がどう対処するか、そこがポイントになる。作者は他のシリーズでも権力者を徹底的にデフォルメするのがひとつのパターンになっているが、本作では道路建設の予算を獲得するために国土交通省ぐるみで一般人を巻き込む大惨事を起こしたり、反対派などを謀殺したりさせている。
むろん、本書はフィクションである。だから官僚たちが一般市民を虫けら扱いするようなセリフをしゃべったりしても、あくまでフィクションだといえばすむことだろう。しかし、本当のエリートがそのような不用意なことをたとえ仲間うちであっても口走るだろうか。あるいは、露見すれば省全体が破滅するような犯罪を計画するだろうか。現実に猪瀬直樹を国土交通省の役人が謀殺するだろうか。デフォルメするにしても、ここまでやると座がしらけてしまうのではないだろうか。
生々しいほどの事件を荒唐無稽な主人公が解決するからカタルシスがあるのであり、とてもありそうにない事件を全くあり得ない主人公が解決しても、そこには読者の共感は得られまい。
シリーズ化するにはうってつけの題材である。主人公の荒唐無稽さが生きる設定での続巻を期待したい。それだけの実力のある作家なのだから。
(2004年6月20日読了)