読書感想文


プロ野球のサムライたち
小関順二著
文春新書
2004年6月20日第1刷
定価700円

 「ドラフト会議倶楽部」の設立者で、プロアマをとわず野球選手を見続けてきた著者が、プロ野球史上に残る名選手たちのエピソードを書き連ねたノンフィクションを刊行した。これまで日本のプロ野球が抱える問題点を鋭く追究してきた著者が、いったいどういう観点から名選手たちの評伝を書いているのか。私の興味はその一点に絞られる。
 タイトルに「サムライたち」とあるように、野球を金儲けの道具としてしか見ていないオーナーたちに対し、野球というスポーツに対して、ただ自分の気持ちをこめ続け、それが時には反逆児のレッテルをはられるという結果になってしまった者もいる。あるいはジャイアンツという特殊な環境に身をおき、そこで自分流を貫くことにより存在感を増すつわものもいる。著者は、取材したことだけでなく文献や記録を徹底的にあたり、情緒的な選手紹介は極力抑えて誰もが納得するように書き進めていく。そして、記録からこれまでの通説を打ち破る新たな選手像を浮き彫りにもしてくれる。
 だから、本書は単なる名選手列伝ではなく、秀逸なプロ野球論でもあるのだ。プロ野球選手はこうあってほしいという、現役選手へのメッセージも込められているように思うのである。

(2004年6月20日読了)


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