読書感想文


創価学会
島田裕巳著
新潮新書
2004年6月20日第1刷
定価680円

 連立与党である公明党の支持母体として大きな力を持つ宗教団体、創価学会。宗教学者である著者は、極めて客観的な立場からこの団体の成立から発展、そして今後の課題などをわかりやすく説明している。
 創価学会が飛躍的な発展をとげたのは高度経済成長期であるが、それは農村から労働力が都市部に流入してきた時期に重なっている。そうした労働力は、学歴はそれほど高くなく、また故郷と切り離されて自分のよるべき共同体を失った層だと著者は指摘する。創価学会はこうした層を入信させ共同体を形作ることにより、発展した。そして現在はその信者の子どもや孫が組織の構成員となっているという時期を迎えている。彼らにとっては創価学会こそが「村」であり、共通の価値観(ここでは信仰)を持った仲間のいる場所なのである。会員同士が結婚をし、その子どもがまた共同体の一員として組織を支えていく。
 名誉会長の池田大作については、その庶民性がカリスマとしての力を発揮するのだと著者は書く。これは、反創価学会の立場にあるジャーナリストたちが1対1で池田大作にインタビューしたあと、その人物像について好感を抱くようにさえなっている事実を指し示して世間に流布する独裁者としての池田像とのギャップを指摘するにとどまっている。
 分量やスタンスから、本書に創価学会に深く切り込んでいくだけのものを期待してはいけないだろう。それよりも、よくこの分量で過不足なくかつわかりやすく創価学会についての情報を提供したものだといえるだろう。基礎知識を得るには最適の一冊なのではないかと思う。

(2004年6月23日読了)


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