大阪と東京を比較した本は多い。たいていは「雑学倶楽部」といったような団体名で書かれていて、東京人が抱く類型的な大阪のイメージを補強するような内容になっている。しかし、本書はそういったものとはひと味違う。著者は毎日新聞の記者で、長らく大阪本社に勤務し、東京に転勤して「サンデー毎日」の編集長をつとめたり、東京と大阪のラジオ番組に同時期にレギュラー出演するなどして、実際に東西の違いを肌で感じてきた人なのである。
だから、「大阪の女性は派手だ」「東京はそばで大阪はうどんは間違いだ」「ナニワのド根性は嘘だ」と、東京のマスコミが面白おかしく書き立てる大阪像をしっかりとした根拠のもとに否定できるのである。
大阪と東京の文化は明らかに違う。しかし、その違いをおおげさに並べて笑うのは東京に出てきている地方出身者が自分の故郷を蔑むかわりに大阪をスケープゴートに仕立てているのではないかと私は考えている。本書はそこまでは書いてはいないけれど、私のそういう考えを補強するような事例が多く含まれている。
最近、東京の若者にも大阪弁が浸透し、怪しげな発音ながらムードを作るために大阪弁らしきものを使う者も出てきていると著者は指摘する。しかし、だからといって彼らは大阪に憧れたり移住したいと思ったりはしないようだ。作られた「大阪」のイメージにとらわれているというところなのだろう。本書では、誰がそういうイメージを作り出したかという原因も指摘されている。
大阪の魅力とは何か。転居してきてまだ10年の私には、その奥深いところまではわかっていないと思うが、本書はそのガイドブックとして大きな力となるのではないかと思う。
(2004年6月27日読了)