読書感想文


シン・マシン
坂本康宏著
ハヤカワSFシリーズJコレクション
2004年6月30日第1刷
定価1800円

 謎の病気、MPS(機械化汚染症候群)の流行により、罹患した人々の脳はMPSランニングというテレパシーの能力を持つようになる。そして、MPSランニングによるネットワークが人々を結びつけ、人間の大多数がそのネットワークでつながった時、社会はテレパシーを使える人間のためのシステムを発達させるようになった。逆に罹患しなかった人間はスタンド・アロンと呼ばれ、社会からつまはじきにあうようになる。本書の主人公はそのスタンド・アロンである国東弾。彼は不治の病に冒された双子の弟を救うために、どのようなMPSも受けつけない真樹という女性を探さなければならない。しかし、MPSランニングのネットワーク上に形成された無意識政府体は、「七本の手部隊」という刺客を送り込み、弾の行動を阻む。
 本書の魅力は、その設定にある。テレパシー能力者が独自に形成したネットワークと、それに入れない非能力者の相克。また、風太郎忍法帖を思わせる奇怪な能力の持ち主たちに対して身体能力だけで戦わなければならない主人公の決死の戦い。機械化が進み、異常な変化をとげた人間たちの醜い姿。
 そういった設定のもとで、激しい戦いが繰り広げられる一方、生命とはなにか、人間と機械との違いとはなにかという、大きなテーマがだんだん明らかになっていく。
 アクションシーンの面白さがまた格別である。次々と現れる強敵との息詰まるような戦闘シーンの迫力には圧倒される。デビュー作でも見せた、アニメーションの影響を受けながらもそれを独自のものとして文章化するという作者の特長がここでも発揮されている。
 さらに、主人公の戦う理由が憎んでいさえした兄弟を救うためというあたり、家族というもののつながりとはなにかという現代的なテーマを作者ならではの感性でストレートに表現しているといえる。
 これがデビュー第2作長編となる作者だが、全体のバランスにまだ不安定な面が若干見られるものの、読んでいる間はそのようなことを感じさせない力が本書にはある。野球に例えれば球速150キロを超える剛球投手という感じか。
 そう、本書はまさに力技の連続である。愚直なまでに力で押してくる、その爽快感を楽しんでいただきたい。

(2004年6月6日読了)

(本稿はネット書店サイト「bk1」に掲載されたものをそのまま使用しております。ご購入はこちらから)


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