古代ギリシア哲学から現代思想までの西洋哲学の考え方をまとめ、整理して示したもの。哲学入門としてはよくまとまった1冊である。特に、哲学というもののポイントをソクラテスの「〜とはなにか」からプラトンの「私とは誰か、なにを知り得るのか」、さらにこの2つを深め論理だてたカント、それを一旦全て否定してしまうニーチェの「なぜそのことを問うのか」の4段階に分けて示したのは、標題通り哲学の「地図」を書いたものとなっているといえる。
ただ、著者の専門である西洋哲学は、どうしても専門的になりがちであり、逆に付録的に示されている仏教、儒教、道教といった東洋思想の説明の方がよりコンパクトでわかりやすいという感じはした。
哲学のガイドブックというのは、ただ単に哲学者の思想のダイジェストに終ってしまったのでは、何にもならないだろう。それだけにとどまらず、読者が自分自身について哲学的に考えるきっかけとならなければならない。本書は、成功したかどうかはともかく、そういう方向は見失わずに構成されている。高校段階の「倫理」から一歩踏み込むには適したものだろう。
とはいえ、著者の判断により重く扱われている哲学者と軽めに扱われている哲学者が出てくるのは仕方のないところではあるが、そこらあたりのあんばいが必ずしも適切であるかどうか。そういう意味では本書以外の哲学入門もいくつか読んでそれぞれの内容を比較した上で次のステップに進むという方法を読者は取るべきだろうと感じた。
(2004年8月19日読了)